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副業を始める予定でいます。
その準備をしているところですが、どのような形で副業を始めるべきなのかを悩んでいます。
個人事業としてするのか、会社にしてしまった方がいいのかということです。

なるほど、それは難しいところですね。どちらにもメリットとデメリットがありますからね。

そうなのです、その見極めが難しいなと思っています。何か判断する基準などはありますか?

まずは、個人事業主と法人との違いを知ると良いと思いますよ。その上で、自分のケースに当てはめてどちらの方がメリットが大きくなるかを考えると判断しやすいです。
副業といえども事業を始めるわけですから、開業の手続きをすることが求められます。
その際には、個人事業主となるか法人組織を立ち上げるかという選択肢が存在します。
それぞれにメリットとデメリットがありますので、両方を比較してどちらが適しているかを判断しないといけません。
判断の材料として、それぞれの特徴と求められることも確認しておくと良いでしょう。
こうした知識を基にして、自分が副業でどんなことを成し遂げたいかを考えて最終的に決断することができます。
この記事で分かること
・法人を作らず個人事業主として副業をすることのメリットとデメリット
・法人にすべきか個人事業主で副業をするかを判断する基準
・法人を立ち上げる際に考えるべきポイント
副業を個人事業主としておこなうメリット・デメリット

メインの収入はサラリーマンとして得ているわけですから、副業に割ける時間や労力というのはある程度限られていることが多いものです。
また、収入の面でもメインの給与の方が多くもらっているという人がほとんどです。
そのため、副業はあくまでも本業を支える程度と考えているケースが多い傾向にあります。
こうしたことから、副業を始める場合は、簡単にスタートできる個人事業主からと考えるのが普通です。
実際に副業をしている人のほとんどは、個人事業主という形態を採っています。
しかし、将来的に副業の方をメインにして脱サラしたい、利益がかなり大きくなってきているという場合には、個人事業主ではなく法人を設立した方が有利になることも多いです。
そのため、個人事業主として副業をするか、法人にしてしまうかという判断はどこまで事業を拡大するかにかかっています。
どちらの形態を採るかという判断に当たって、どんなメリットとデメリットがあるのかを確認して、その見極めの基準を持つことが大事です。


メリット(法人のデメリット)
法人設立と比べて、個人事業主として商売をスタートするのはとても簡単です。
具体的には、税務署に開業届を出すだけで済みます。
これは「個人事業税の事業開始等申告書」という書類で、国税庁のホームページからダウンロードしたり、税務署でもらったりできます。
自分の住所氏名や事業をする際に使う屋号などを記入して、税務署で提出します。
特に添付する書類や面倒な手続きはなく、書類に問題がなければすぐに終わります。
また、手数料はかかりませんので、かなり気軽に始められます。
もし、確定申告を青色申告にしたいのであれば、一緒に青色申告の申請書を出します。
こうした書類は、事業を始めてから1か月以内に提出する必要があります。
一方で法人を設立するとなると、いろいろな手続きが必要となります。
まず商号と呼ばれる会社名を決めるのですが、他に同じ名前を使っているところがないかなどを調査する必要があり、それなりの手間がかかります。
その上で、資本金の準備をしないといけません。
そして、定款を作り認証を受ける必要があります。
法的に有効なものとすることが求められますので、たいていは司法書士や社労士などに相談することになり、それなりの手数料がかかります。
こうした書類を作ったら、法務局に登記をしないといけません。
書類がしっかりと揃っていれば、さほど難しい手続きではありませんが、ミスなく行うためにやはり司法書士に依頼することが多いです。
ここでも別途費用がかかります。
さらに、開業届とは別に、社会保険関連の届出を提出しないといけません。
会社組織にする場合は、社会保険への加入が必須だからです。
こうした手続きをすると、少なくても25万円程度の費用がかかりますので、経済的な負担も出てきます。
こうしたスタートアップにかかる手間と費用という面で、個人事業主はメリットが大きいです。
さらに、個人事業主は税務や会計処理の手間がかからないというメリットがあります。
白色申告を選択すれば、知識の必要な帳簿作成の必要がなく、家計簿を付けるのと同じ感覚で処理ができます。
特別控除が受けられ節税ができる青色申告をする場合でも、複雑なお金の動きがなければ、ちょっと勉強すれば簿記の仕方を理解できます。
また、専用の会計ソフトも出ていますので、自分一人でも行えることがほとんどです。
会計ソフトはリーズナブルな価格であることが多いので、それほど費用の面では負担はかかりません。
また、自動的に仕分けや税務申告のための処理をしてくれるので、会計に関する手間はかなり省けます。
一方で法人の場合は、会計と税務が複雑になるというデメリットがあります。
複式簿記という記帳の方法を採る必要が出てきて、細かな処理が求められますし作成する帳簿もぐっと増えます。
ミスがあると指摘を受けることも多く、会計処理だけでかなりの労力を取られてしまうのが事実です。
また、正確に処理を行い申告するために、税理士を雇う必要が出てくることも多く、その分の費用もかかってきます。
法人の方が節税効果はずっと高いのですが、その分経費もかかってくるということです。
小規模な経営であれば、個人事業主の方が税金が安いという点もメリットとなります。
個人事業主には、所得税とは別に個人事業税という税がかかります。
しかし、年間事業所得が290万円以下であれば、非課税となります。
副業ということであれば、年間所得が290万円を超えるケースはそう多くありませんので、法人と比べると税金が低くなります。
法人にするかどうかという判断は、この額を基準にして考えることもできるでしょう。
法人の場合は、法人事業税や法人税、地方法人特別税など複数の課税対象があります。
特に法人住民税という税の存在が負担になることがあります。
これは、少なくても7万円がかかってきますので、赤字であっても支払いが求められます。
一方で個人事業主の場合は、黒字となっても5,000円で済みますので、副業の状態ではその差は大きいです。
資金や資産を自由に使えるというのも、個人事業主であることのメリットと言えます。
事業で得たお金や資産は、あくまでも個人所有とみなされるからです。
一方で、法人にすると、資金や資産は会社のものと個人のものとを明確に分けないといけません。
そのため、従業員がほぼいない家族経営の会社であっても、個人的な理由で会社名義の資産を処分したり、資金を流用したりはできないのです。
事業で得た資産は会社のものとなるため、自分が死んで相続をしたくても、子どもに継がせることはできません。
一方で個人事業主であれば、資産は自分のものですので、自由に財産を子どもに相続することができます。
もう一つの大きなメリットは、税務署の調査が入りにくいという点です。
もちろん、法人であっても個人事業主であっても、しっかりと会計処理をして税務申告をしていれば、税務調査が入っても心配することはありません。
しかし、実際税務調査を受けるとなると、時間を取られてしまいますし、何よりも経営者の精神的なストレスは大きなものがあります。
そのため、できるなら税務調査を避けられるに越したことはないのです。
その点、事業規模が小さくお金の流れがシンプルな個人事業主であれば、税務署もあまり厳しくチェックしようとは思わないので、税務調査を受ける可能性が低くなるのです。
税務調査が入ると、何らかの指摘を受けて追徴課税が発生することもあります。
法人だとそのリスクも上がりますので、法人だとデメリットが高くなると言えるでしょう。
デメリット(法人のメリット)
個人事業主として副業をすることには、法人による事業と比較してデメリットもあります。
その大きな点としては、まず信用が低いということが挙げられます。
すでに長年商売上の付き合いをしている取引先ならともかく、いきなり個人がビジネスをもちかけてきても、すぐに信用して取引をしようと言う顧客は少ないでしょう。
特に、大きな企業や行政機関などは、よほどの事情がない限り個人相手に取引をしないことが多いので、どうしても顧客層が狭まってしまいます。
その点、法人を設立すれば、たとえ小さな事業規模であっても個人よりずっと信用力が強いです。
これは営業のやりやすさだけに関係することではありません。
資金調達という点でも個人事業主にはデメリットがあります。初期投資をするにしても、運転資金を得るにしても、銀行などから融資を受けたいと思うことがあるかもしれません。
そのような場合、個人事業主だと信用度が低いので、審査に通らなかったり、そもそも申し込みそのものができなかったりします。
その分、事業拡大が難しくなりますし、資金繰りに困って事業を続けられなくなるリスクも生じます。
お金の流れを余裕を持って作れるようにすることは、経営をするために重要なポイントですので、資金調達ができるかどうかを真剣に検討した上で決めたいところです。
税制上の優遇措置が少ないというのも、個人事業主のデメリットです。
青色申告をすれば特別控除がありますが、それ以上のメリットはあまりありません。
一方で、法人にすれば所得税よりも低い税率の法人税で課税されます。
こうしたメリットの他に、経費として認められる支出がかなり多いという点が挙げられます。
自宅を事務所として使う分の算入割合が高くなりますし、退職金の支払いもできるようになります。
個人事業主では節税できる部分が少ないので、余分に税金がかかるというデメリットを避けられないのです。
もう一つの大きなデメリットは、自分の資産を失ってしまうリスクがあるという点です。
事業に失敗して負債を負った場合、個人事業主の場合は債務を個人資産でカバーしないといけません。
事業では使っていない、完全に個人所有の貯蓄や不動産であっても、個人事業主では差し押さえの対象となることもあり、実質上無限の責任を負うことになります。
一方で法人の場合は、会社の資産と個人の資産が明確に分けられます。
そのため、事業で大きな負債が出ても、会社名義の資産でカバーすることになります。
代表者であっても、個人で持っている資産については守っておけるのです。
このように、法人だと有限責任となり、たとえ事業に失敗しても再びやり直せる機会を持てます。
もちろん、やり直しは簡単ではありませんが、それでも個人事業主として失敗するよりもチャンスは大きいのです。
個人事業主と法人どちらで始めるかを決める5つの検討ポイント

こうしたメリットをデメリットを見ながら、個人事業主と法人のどちらで起業をすべきかを検討することができます。
その際には、以下のポイントごとに分析していくと的確な判断がしやすくなります。
資金の調達面
起業するための初期投資があまり必要ない、もしくはすでに貯蓄として自己資金を持っている場合には、さほど苦労せずスタートできます。
そのため、個人事業主でも苦労しないでしょう。
一方で、ある程度の資金調達を融資などでまかなう必要があれば、信用力で勝る法人の方が優れています。
副業のノウハウと人材の必要性
すでにノウハウと経験があり、自分だけでも起業して事業継続ができるなら、個人事業主でもスタート可能です。
しかし、特定の分野でのノウハウが足りないとか、純粋に労働力が足りないという場合は、従業員を雇う必要が出てきます。
こうしたケースでは、法人の方が即戦力のある人材を募集しやすいですし、経費として計上できる部分も多くなり有利です。
信用の必要性
企業や行政機関などを相手に商売をしたいケースや、許認可が必要な事業をしたいという場合では、法人としての信用力がないと難しいです。
一方で、ネット上のビジネスで個人を顧客とすることを想定しているなど、個人でも信用の点で問題ないなら個人事業主でも構わないと考えることができます。
税務対策面
お金の流れが複雑で、収入と支出のどちらも大きいのであれば、法人の方がずっと有利です。
それだけ節税できる項目が増えるからです。
また、事業を始めたばかりのときは赤字が出そうだというケースでも、法人の方が良いです。
というのも、法人にすると赤字を繰り越して黒字と相殺できる年数が、個人事業主よりも長いからです。
副業に対する将来プラン
ちょっとしたお小遣い稼ぎとか、本業の収入をカバーする程度の利益を上げられれば良いということであれば、個人事業主の方が気楽です。
しかし、将来的に独立して、サラリーマンを辞めたいとか、事業を大きくしたいと考えているなら、法人設立を検討しましょう。
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法人設立時:株式会社や他形態家の選択ポイント

法人と一口に言っても、株式会社以外にも設立して利用できる形態があります。その一つのオプションとして挙げられるのが、合同会社と呼ばれる法人組織です。
これはLLCとも言われることがあり、同じ会社組織でも株式会社とは異なる特徴を持っています。
そのため、事業規模などによって、LLCの方が良いこともあります。
それぞれの特徴を比較して、法人の形態を選ぶようにしましょう。
株式会社と合同会社(LLC)の比較ポイント
株式会社は、出資者つまり株主と経営者が異なることを想定して作られている法人組織です。
株式を発行することによって広く資金を集められるので、事業を拡大するのに適しています。
投資家からの資金調達ができるので、融資を受けなくても事業を広げられることもあります。
一方で、株主である出資者が経営に参加することになりますので、外部からの意見に耳を貸さないといけないという点を考慮しなければなりません。
それだけ、経営の自由度は下がるというわけです。
また、株主が正しい情報に基づいて出資をするかどうかを決めるため、決算公告というものをしなくてはなりません。
これは、会計上のデータを公表することです。公告のための手間がかかりますし、会計の中身を他に知られてしまうことになります。
一方で、合同会社は出資者自身が経営者となることを考えている法人です。
そのため、代表者とその身内で小さめの規模での経営をするのに適しています。
外部からの資金が基本的に入らないので、より経営決定についての自由度が高いという特徴もあります。
また、会社内のルールを決めるのも楽なので、制約に縛られる点が少ないというメリットも存在します。
一方で、株式の発行がないので、資金調達の方法が限られることになります。
さらに、世間においては会社というと株式会社というイメージがありますので、合同会社と言ってもあまり理解してもらえないことがあります。
もしくは、株式会社よりも信用度が低いと見なされてしまう可能性も存在します。
とはいえ、最近では大企業であっても、いろいろな事情で株式会社から合同会社に形態を変更するケースも出てきますので、情報が浸透するにつれてこうした問題は解消されていくでしょう。
全体としてみると、合同会社は家族や親族、友人などの出資によって身内での経営をするのに適している形態と考えることができます。
また、外部の人をあまり入れることがないので、すでに自分たちで持っているノウハウや経験を使って事業を行っていくという特徴があります。
株式会社の場合は、資金を広く集め事業を拡大していくのに適しています。
また、役員も含めたくさんの人材を集められるので、やはり事業拡大指向を持っているケースで有利です。
まとめ

副業であっても、将来的に大きくしたいと思っているのであれば法人設立によって起業をした方がメリットが高くなります。
しかし、あくまでも副業に留め、面倒な手続きや資金調達を必要としないということであれば、個人事業主でも十分やっていけます。
どちらにもメリットとデメリットがありますので、適切な判断を下せるようにしたいものです。
自分の事業の内容や、将来への目標などを考慮に入れて、どちらの形で起業すべきかをじっくりと決めるようにしましょう。




